
神亀
埼玉県蓮田市。首都圏のベッドタウンであり、日本酒の銘醸地のイメージとはかけ離れた土地に多くの日本酒関係者が訪れるのは、純米酒の聖地ともいえる神亀酒造の存在があるからだ。 創業は1848年。7代目にあたる小川原良征蔵元が戦後初の全量純米蔵への転換を成し遂げたのは、1987年のこと。当時の日本酒業界においては純米酒の製造量は、市場の2割にも満たない状況だったが、小川原氏は「日本酒の戦後を終わらせる」との決意で、先の大戦中から始まったアルコール添加の酒造りに決別した。 同業者への技術指導、農業との連携につとめた良征氏は、全量純米蔵を目指す蔵元たちのリーダーとしての活動も熱心に続けていたが、2017年惜しまれながら逝去。現在は、その遺志を継いだ8代目の小川原貴夫氏と四半世紀にわたって神亀の味を守り続けてきた太田成典杜氏との二人三脚で、さらなる酒造りの深化が追求されている。 現場においては、「日本酒は米と麹の酒」という信念に基づき、すべての麹造りを麹蓋(麹造りに使用される道具の中で一番容量が小さく、そのため作業の手間が増える)で行うという稀有な仕事が重ねられている。使用する酵母は協会7号と協会9号のみ。生命力の強い酵母と麹の力の相乗効果による完全発酵を経て上槽された酒は、一部の無濾過生原酒を除いては、じっくりと熟成させるのが信条。「ひこ孫」銘柄においては、3年以上の熟成を経て出荷となる。純米燗酒の食中酒としての魅力を伝えるため、蔵元自身が講師をつとめる「かめ塾」と名づけた啓蒙活動も定期的に行われている。







